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・・・名前・・・・・・・・・・・
 




『ところで 名前をまだ聞いてなかったな?』



ガバスに向かって歩きながら ダーギールと名乗った男が尋ねた



『・・・・・・・・ナラ です 』



『それは 父名だろう 個人名はなんだぃ?』


この国では 個人名の後に 父名 それから家族名がある


ふつう女性は ○○(父名)の娘とか ○○(家族名)の娘などと呼ばれるが 

やはり ごく親しい者どうしなら 個人名で呼ぶ



『パーミンダ・・・です   でも それはこの体の持ち主の名前なんです。』



『そうか・・・・・じゃぁ新しい名前が要るな』


『ゼッツがつけてやったらどうだい?』


もう一人の男はゼッダールターと名乗ったのだが 

ダーギールは今朝 ゼッツというニックネームをつけてしまった


彼曰く

『見た目が人間離れしてるんだから 呼び方くらい簡単にしないと肩が凝って仕方ない』

のだそうだ


『俺のことは ダーギーちゃんとでも呼んでくれ♪』



ニャリと笑ってそう言われたが それは丁重にお断りしておこうと 心の中で思った



『どうだい? この子に似合う可愛い名前なんて やっぱり思いつかないかい? 』



ゼッダールターは沈黙を返した。





ダーギールとゼッダールターも最近知り合ったばかりらしい 

もっともこちらは ダーギールが一方的に “旅の連れ” になったのだが・・・



ダーギールは


『俺は強い奴を探してたんだ  都でこいつの噂を聞いてね どうしても合いたくなって来ちまったのさ』


と説明した。


ゼッダールターは 黒い森の 湖の隣にそびえる山の頂にある寺の修行僧の一人で



ダーギール曰く

『もう この男は その辺の坊さんの手に負える品じゃなくなっていた』

のだそうだ。

 

『お坊様でいらしたのですね』


『私は あの山に修行寺があることすら知りませんでした』


彼女が沈黙をやぶり 誰にとも無く話しかけた。



ゼッダールターがふと 彼女を向いて言った。


『アィリーシェ というのはどうだ?・・・』 



『ケルト人みたいな名前だな』


すかさず ダーギールが茶々を入れた


『だが なかなかいいんじゃないか?』


一人で満足そうに頷く



ゼッツは 彼女に名前を考えていたのだ。



『 ・・・・アィリーシェ 』 呟くと 何故か心が温かくなった 


昨日合ったばかりなのに ゼッダールターに名付けて貰った事が嬉しかった



『嬉しい・・・・・』 声に出すと 余計 嬉しさが溢れた


『素敵な名前です♪ ありがとうございます!!!』









そうして 黒い森からガバスの町が見えるようになるまで 

彼らは 丸2日荒地を旅しなければならなかった。


旅が始まって直ぐに アィリーは

(アィリーシェは可愛い名前だが少し長過ぎる と言って ダーギールにこのニックネームを献上された)

ダーギールがとてつもなく強い剣士だという事がわかった



森に入ったとき襲われた コヒョウという狼頭の豹も ダーギールは一撃で倒しただけでなく


荒地を旅するすべての者を悩ます 野良狼の群れや ジョラケー(岩場に住むワニ)


リザードマン(砂漠に住むトカゲのような妖獣) にも何度か襲われたが 


全部ダーギールが一人で倒してしまった



ゼッダールターは時々何か経文のようなものを唱えていたが 


それが何の為だったのかアィリーには分らなかった。









町に近づくにつれ道が整い 幅も広くなってきた 


大きな牛のようなオーロという動物が引く行商人の荷馬車とも 何台かすれ違った




海のように大きな湖と 辺境を貫く街道に面した町 ----- ガバスの門を潜った時 


もう閉門の時間が まじかに迫っており


タミルの村の木の門より 1回り程大きな 青銅で作られているガバスの門周辺は


オーロの引く荷馬車と人とが バタバタと行きかっていた


『どこかに宿屋はねぇかな?』


ダーギールが通行人を捕まえて尋ねる


『明日船が出るから この辺の宿はもう取れないだろうな 


少し離れるが オロソの宿ならしっかりしてるよ』



早口で親切に教えてくれた男は、 ゼッツに気が付くと 


一瞬呆けたように立ち止まり 持っていた荷物をドサッと足元に落としてしまった。


教えられた方角に進みだした ダーギーは


『まったく・・ 目立ってしょーがねぇな』 と 一人ごちた。





アィリーは笑いをこらえながら 荷物を拾って男に渡し 急いで2人に続いた。





ダーギーが愚痴る気持ちも分るが 等の本人も相当人目を惹いているとは気が付いていない


日に焼け均整の取れた大きな体にはアチコチ古い刀傷があり 


元来の人好きする顔と合わさって この上なく頼もしくみえる  




(ーーーークスクスーー)



『なにが可笑しいんだ?』


『何でもないです♪』


『アィリーは素直ないい子だと思っていたのに・・・ おとーさんは悲しいぞ』


『ダーギーさんを父に持った覚えはないです』   


『お前ッ 父の顔も忘れたのか???』  


(クスクスクスクス)


『ところで アィリーは何歳だ?』


『父さんこそ忘れたの?  


娘の年も分らないんじゃー  父とは呼べないですよ! クスクスクスクス 』


宿屋はもうそこだった アィリーは前を行く男2人を小走りで追い抜き


ダーギーを振り返って言った。


『今年15になりましたよ^^ おとーさま♪』



バシャーーーーーーーーーン


水桶の落ちる音と 派手に飛び散った水しぶきが足にかかり 後ろを振り向いたアィリーは


男達の顔を見てなかった。


ダーギーは一瞬変わった顔色を 次の瞬間には取り戻して 



宿屋の入り口に立ちすくむ少年に声をかけた


『結構なお出迎えだな坊主!  もう少し上から掛けてくれたら水も滴るいい男になったんだがなぁ』




少年は凍ったように3人を眺めている。


『こらっ 何してるんだいッ お客さんに謝りな!!』


中年の女性が宿の裏から エプロンで手を拭きながら出てくると


少年は頭をペコリと下げて 水桶を拾い 宿の中に消えた


『まぁまぁすみませんねぇ。  ・・・お客さん泊りかぃ?』


おばさんは やはり少し息を呑んでから言った



『生憎今日はもう一杯だが 離れなら空いてるよ 


明日船が出る日のこの時間じゃ ここいらの宿はどこも同じようなもんさ』



『あぁ頼むよ 』

ダーギールが腰に下げた皮の袋から 小さな金の塊を出して 手渡した。


鈍く輝くその欠片を見て おばさんが満面の笑みを浮かべて言った。


『じゃぁ 埃を落としてから入っとくれ 洗い場はそこだよ』


見ると 左手の奥に旅人が旅の埃を落とす 屋根つきの小さな洗い場が設けてある


『部屋を用意して来るから 先に何か食べておくれ』




木と石で出来た入り口に 布が垂れていて 中は色々な大きさの敷物敷いてあり 


クッションと衝立が簡単な仕切りを作っているのが見える





宿の1階は食堂になっているらしい 結構な人で賑わっていた


『そうそう クィヤーンを頼むといいよ  名物だからね。』


裏に回りかけていたおばさんが そう付け足して去っていった







洗い場で埃を落とし 3人が中に入ると 




30畳ほどの部屋にいた人々の間に 低いどよめきが起きた 


そして  サァーーーと波が引いていくかの様に その場に沈黙が訪れた。




明らかにこの3人は 人々が日常目にするものとは 全く違う空気を持っていた。




ダーギールは体も大きく 日に焼けた褐色肌と 均整のとれた体 良く見ると分る無数傷などが

彼が只者でない事を 物語ってはいるが 


その強さとは裏腹に 彼を包んでいる陽気なオーラが

彼に会う全ての人に “安心感” を感じさせた



その隣にいる

しなやかな肢体を持つ 初々しい美少女は

透き通るような白い肌と 幼い顔には似合わない大きな胸が

彼女に色気ともつかない不思議な魅力を与えている


(そしてここ数日の旅を経て 彼女の周りには つぼみが花開く時のような 

光り輝くオーラが出ていた)




この2人だけでも十分目立って 人々は思わずどよめいたのだが


その場に居た殆どの者が沈黙した理由は 一番最後に入ってきた若者を見たからだった






先ず 向こうが透けて見えそうな程 白いというよりは 透明感のある肌が人目を惹く


長い黒髪が 真っすぐ伸び 誰もが一瞬 女かと思うほど美しい顔に


無駄の全くない肢体が 薄いカシャーヤ(僧侶の衣装)をまとっているのも   


人間離れしてた印象を際立たせている


そして何より この男のもつ静かで強いオーラが 


この狭い宿屋に居る すべての人を飲み込んだからだった






『・・・・・・・まったく  一緒に居ると目立ってしょーがねぇーな 』


ダーギールが軽く首をふった 


その声でか 人々が冷静さを取り戻し 一瞬後には いつもの宿屋のざわめきが帰って来た




部屋の左隅に空いている絨毯と大きなクッションを見つけると ダーキールはそこにドカドカと歩き 


『なんだっけな・・・ おやじ クィヤーサンを持ってきてくれ!!! 』


と 座りながら 店の奥に向かって言った


彼の陽気な声が 何事も無かったかのような喧騒に吸い込まれる


厨房から顔を出していたおやじが うなずいて引っ込んだ。



『ダーギーさん  クィヤーンですよ 』



『わかりゃー何でもいいんだよ   あーそれと酒だ 酒!!!』


最後の半分は また店の奥に向かって言いながら 


もう大きなクッションに寄りかかって くつろいで居る



ゼッダールターも座禅を組んですわり 


店のおやじが持ってきたクィヤーン(鳥に似た肉を炭火で焼いた料理)はとても美味しくて 
(ダーギールは10人前も平らげた)


アィリーは久ぶりに食べる調理された温かい料理と 


初めての冒険の後の食事を 心から楽しんだ






丁度 ダーギーが2ガロ(約8リットル)の地酒を飲み 

11人前のクィヤーンをかじりながら ウトウトし始めた時   

入り口で会った おかみさんが皿を下げながら


『部屋の用意はできてるよ いつでも上がってゆっくりしておくれ』


と言った。
 

“ゆっくりできる” と 形容された部屋はしかし とても狭く


オーロ小屋の上に無理やり取ってつけたような部屋だった


明らかにおやじの手仕事なのであろう 木を組んである三方の壁の 所々に隙間があいている


だが今日のように 秋にしては暑い日の夜には


その隙間から入ってくる夜風や 石の床(それはオーロ小屋の天井にもなっている)が 


程よく涼しくて気持ちが良いだろうと思われた。 





部屋に着くなり ダーギールが真ん中でゴロン と横になった 


彼の両端には僅かに50センチばかりの幅しか残っていない


『ちょッ ダーギールさん 真ん中に寝るのはやめて下さい』


アィリーは慌てて巨体を動かそうとしたが 既に寝入ってしまった暢気な剣士はビクともしない


『私はここで良い あちらに入って休みなさい』


あちら?? 


良く見ると 壁だと思っていた部屋の北側は 天井から白い布が垂らされて仕切りを作っていたのだった 

布を上げてみると その向こうに幅1メートルほどの空間があり 布団のような敷物が敷いてあった


(ゼッツ様がこちらでお休み下さい・・・・・・・)


振り向いてそういいかけたが  部屋には もう美しい男の姿は見えなかった。



※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

【 2008/11/09 23:48 】

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コメント
--- ---

名は体をあらわすと言うくらいで、キャラクターの名前考えるのは
大変だったんじゃないかな? 昔かっぱは日本名ってファンタジーには
向いてない気がしていたのですが・・・・宮沢賢治の童話も日本名少なかったし・・・
でも、竹取物語や花咲かじじいも立派なファンタジーなのだと再認識してから
和名(日本名)だってやるじゃん、なんて思ったのでした。
遠野物語も立派なファンタジーだもんね。
どんとはれ
かっぱのコックさんはゆきみでもあるのさっ * URL [編集] 【 2008/11/12 10:39 】
--- ゆきみさんでもあるかっぱのコックさん (〃´∀`)ありがとうございます! ---

あ・・・コメント下さいって やっぱり 図々しかったかなー って

最後のお願い消してから

コメントに気が付いてしまいました><


連続コメント・・う・・・うれしすぎる (ノ∀`*)ノ彡☆!!!


そーーなんです 和名って大好きだし 馴染みもあるので 私にとっては考えやすいんです

このお話・・・湖で 綺麗な男の人が出てくるワンシーンを夢で見て そこから考えたストーリーで

初めから 彼だけ名前が決まっていたんです><

(本当の名前は ガウダマシッダールター(仏陀の本名とされている) にする予定だった)


だから インドの地名や人名なんかを検索して 名前決めてます

でも やっぱ やり易い方がいいなぁー

インドは中国と陸続きだし・・・

登場人物・・・ 漢字名もカナ名も でてくるってありかな・・・ fm
リサ * URL [編集] 【 2008/11/12 11:12 】
--- ---

やっと続きがーw
ってドキドキしながら一気に読んじゃいましたー^^
さらに続きが気になりますが、ダーギール…
大酒飲みの大飯食らいと来たかーw
まさにそれっぽいw
漢字使ったお名前も良いと思いますよー^^
旅人に国境はありませんbb
続きも気長に楽しみに待ってますねー^^
鼻づまりで息が出来なくてご飯が食べにくいるいざよりw
Ruiza * URL [編集] 【 2008/11/13 22:08 】
--- 続き・・・ ---

続きマダァ-? (・∀・ )っ/凵⌒☆チンチン
小説とかさ、書きたいなぁ・・・って思うと止まらなくなるよねw

湖のほとりとか、丘の上とかに一人佇む美形って、ある意味で王道だよねw
絵になるっていうかw
冒頭に持ってきても良いんだけど、そのシーンの必然性を作るのが
また難しい(´・ω・`)

続き期待してまってるよb
いそぢん * URL [編集] 【 2008/11/14 01:15 】
--- Ruiza さん & いそぢん ---


も~~~~~~~><

感無量ってこーゆーの?

読んでくれて凄く凄く嬉しいです><





ゲームでも おイらって奴は 

キャラの lv上げのお手伝いをするのが苦手だったんですけど


lv上げお手伝い何度もしてもらって とても感謝したり 

お手伝いできる人を 尊敬する気持ちと似てます


自分も楽しいお手伝いじゃないと 眠くなっちゃって

どーーーーーしても寝ちゃったりして>< 

これって お手伝いじゃーないよなー 
っていつも思ってました(´;ω;`)ウッ・・


一緒にゲームで遊んでないのに 私のlvあげのお手伝いをして下さる


こころやさしいRuizaさん いそじん 本当に感謝です!!!



これって全員に言いたいので このままブログにも書きます!!!!




お2人とも たくさんの幸せが降りますように(o´_ _)人
リサ * URL [編集] 【 2008/11/14 22:02 】
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