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メインファンタジー(lv7)
㌧㌧


木のドアを叩く音がする


『だれ?』


なかなか眠れず 布団で横になっていただけのアィリーは 素早く起き上がって尋ねた。 



訪問者は しばらく沈黙した後


『セラです』  と答えた


『今日は水かけちゃってスミマセンでした』


『え?・・あぁ あの時の・・・』


『気にしないでいいの あんなの平気よ』


わざわざ言いに来たのだろうか?   宿に着いた時に逢った少年が目に浮かび 思わず微笑んだ

 

きっとゼッツを見て ビックリして水桶を落としてしまったのだろう・・



『それだけ?』


『・・・・・・・・・・・・・・・・いいえ・・・』

『・・・あの時 ホントにビックリしたんです・・・』


また暫く沈黙が続いた


『・・・・・・・・・それで?』


促すと 彼は 少し大きな声でこう言った


『貴女を見た瞬間に分ったんです!!!僕は この人たちと一緒に行くんだっ!!!って!!!』






『へっ(´゚д゚`)??』



『行くって?? 誰と????????』


『どこに??????????????』



『貴方達と 僕の村にです!!!』


『えっ@@??????????????』


『む・む・む・   村って なに????????????分ったって 何が??』


もうビックリし過ぎて 思考回路がついて行かない


なぜ突然 勝手に仲間を決める人間ばかり出てくるのだ???


この国には 行く宛ての無い旅の仲間を探している人間が 実は山程いるのか?


それとも 密かにそーとー冒険好きな国民性だったのだろうか?


『・・・・坊主 お前いくつだ?』


天井から垂らされた布の向こうで いびきをかいて寝ていた筈のダーギーが


いつの間にか起きている


『・・・・・・・・・12です』


『でも 自分の事は何でも出来ます! 僕はずーっと父さんの面倒を見てきたんだ』


『早く帰らないと!!!きっと父さんに何かあったんだ!!!!!』





何か訳有りのようだ 彼の声は今にも泣きそうに聞こえる





訳が分らず かける言葉がみつからない


『お父さん?』




『ぅぅうッ・・・ と・父さんがッ  僕を迎えに来るって ・・・言って・・・  


    コッ こないんだっ』




全部聞くまでも無く ダーギールとアィリーは理解した。 


辺境に生きる人々の暮らしはきつい  


子供を捨てる親は少なく無いのだ。    宿に置き去りにされたのなら良い方だろう



『絶対っ く、来るってッ ・・・・う;ゥッ  イッ イッ・言ったんだっっ』

ウ;ゥッ

『だ・だからっ ぼっぼっ僕はっっ ニッ に2年も・・まってルんだっッ 』




喋ってる内に気持ちが高ぶり 押さえつけていた感情がこみ上げて来そうになる 

   


嗚咽と涙があふれ出そうになったその瞬間 



ダーギーの良く透る のんきな声がそれを抑えた。



『おまェ・・・・・・ 分ってないから泣いてるんだぞ? 何が分ってないか分るか?』




・・・考えるため少年は一瞬止まった




『教えてやるよ    お前は 自分の気持ちが分ってないんだ』




『おまぇの親父が迎えに来たくても来れないんなら 自分から行けばいいだけだし 
 
ウソついたんなら 行ってぶっ飛ばしてやればいいだけだろ?』



『ケツさぇ決まれば 泣くことなんてないんだ

男が泣くときは もっと別の理由があンだよ 』











沈黙が流れた


父親に捨てられた悲しみが 心に突き上げて来るかわりに 

ダーギールのやさしさが少年の上に降ってきて 彼をふわりと包んだ気がした




『別の理由(ワケ)って何でしょうか?』


その声から もう涙は消えていた。



『そりゃーお前 そーゆー涙を流した時分るよーになるんだよ』




『仕方ねぇ・・・・・・・・・・・・行ってみるかぃ?』


ドアの向こうで思わず少年が顔を上げたのが分った


『はいっっっ!!!!』


『おまェなぁ 仲間になりたいんなら そろそろ顔を見せたらどうだ?』


ガタン と音がしてドアがゆっくりと開いた


向こうには 恥かしさの為か うす暗い中でもハッキリ分るほど頬を染めた少年が立っていた


少年は2人を向いて跪き(ひざまずき) 神に祈るように 両肘と額を床につけた


『おぃおぃ!!俺ァあぃにく 礼拝はしないし されない主義なんだ』


ダーギールが 気前悪そうに首の後ろを掻いた




ププッ( *´艸`)


少年と同じように頬を染めた戦士をみて アィリーは思わず吹き出してしまった。





次の日の朝 まだ朝もやの立ち込める中3人は宿を発った。



セラが2年間お世話になった宿屋のおかみさんとオヤジさんにお礼を言い 
(ついでに少ないが餞別も貰って)


子犬が転がるように走ってきて 仲間に加わった

 

殆ど海のように見える湖に突き出した ガバスの港の広い桟橋には

約1ヶ月に一度しかでない 対岸への渡し舟の出港を待ち 

まだ早朝だというのに 沢山の人と出店で賑わっている


停泊しているのは 小さい漁船の他は 古い大きな帆船が一隻で 

長方形の船体はボロボロだが現役の風格で存在感がある 

船底は平たく 両端で上がっていて 龍に似た動物が舳先の意匠になっている



『一人 600バールだよ』 

タバコのような葉っぱを口に入れ クチャクチャ音を立てて噛みながら

対岸までの乗船券を売っている男が 

船賃を尋ねたダーギールに向かって 汚い右手を突き出した



『高ぇ@@!!!!!!!!!』


昨日宿に払ったのより随分大きな金の塊を 2つ男に渡して


ダーギールは 他の3人を振り返り、叫んだ


『おまぇら全員っっ!!! 無一文なんて 旅に出る心構えが無さ過ぎなんだよっっっ』



  

ゼッダールターは、 これもダーギールがついさっき買ってやった 

フード付きのロングコートで 顔を半分隠したまま 笑っている




セラは恐縮してダーギールを拝み


アィリーは 肩をすぼめ舌を出し目をそらした




それを見てダーギールが


『まぁ女と子供以外は 高く売れそうだな・・・』 と言ったので


ボロ船に橋板が架かるまで 彼は その女と子供にボコボコに殴られ続ける事になった



【 2008/11/15 02:58 】

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息抜きファンタジー
ヽ(゚▽゚*)乂(*゚▽゚)ノ ウヒョーイ



突然ですが

読者様〃 ̄∇)ゞありガとォゴザィマぁああぁぁぁぁーーーーーーーーーーーーーーーす♪




読んでくださって 本当に本当に本当に

*゚( 嬉´∀`嬉 )゚*ありがとうございます!!!



なんか 突然ブログにお礼書きたくなりました><



これって こんなにゲームから離れているのに 

まだおイらのlv上げ手伝ってもらってるんだなぁ って感じます



 


本当にありがとうっっ><



楽しみって言われたの 凄く嬉しい!!! 続きがんばりまっっ((((p(`・ω・´)q))))



止まっていたのは ストーリーがまじめ?過ぎて チョット肩凝って来たので 

↓ のを書いてたからでしたm(_ _)m  ( もうサブキャラって・・・(゚Д。)ヤベ
続きを読む
【 2008/11/13 03:06 】

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・・・名前・・・・・・・・・・・
 




『ところで 名前をまだ聞いてなかったな?』



ガバスに向かって歩きながら ダーギールと名乗った男が尋ねた



『・・・・・・・・ナラ です 』



『それは 父名だろう 個人名はなんだぃ?』


この国では 個人名の後に 父名 それから家族名がある


ふつう女性は ○○(父名)の娘とか ○○(家族名)の娘などと呼ばれるが 

やはり ごく親しい者どうしなら 個人名で呼ぶ



『パーミンダ・・・です   でも それはこの体の持ち主の名前なんです。』



『そうか・・・・・じゃぁ新しい名前が要るな』


『ゼッツがつけてやったらどうだい?』


もう一人の男はゼッダールターと名乗ったのだが 

ダーギールは今朝 ゼッツというニックネームをつけてしまった


彼曰く

『見た目が人間離れしてるんだから 呼び方くらい簡単にしないと肩が凝って仕方ない』

のだそうだ


『俺のことは ダーギーちゃんとでも呼んでくれ♪』



ニャリと笑ってそう言われたが それは丁重にお断りしておこうと 心の中で思った



『どうだい? この子に似合う可愛い名前なんて やっぱり思いつかないかい? 』



ゼッダールターは沈黙を返した。





ダーギールとゼッダールターも最近知り合ったばかりらしい 

もっともこちらは ダーギールが一方的に “旅の連れ” になったのだが・・・



ダーギールは


『俺は強い奴を探してたんだ  都でこいつの噂を聞いてね どうしても合いたくなって来ちまったのさ』


と説明した。


ゼッダールターは 黒い森の 湖の隣にそびえる山の頂にある寺の修行僧の一人で



ダーギール曰く

『もう この男は その辺の坊さんの手に負える品じゃなくなっていた』

のだそうだ。

 

『お坊様でいらしたのですね』


『私は あの山に修行寺があることすら知りませんでした』


彼女が沈黙をやぶり 誰にとも無く話しかけた。



ゼッダールターがふと 彼女を向いて言った。


『アィリーシェ というのはどうだ?・・・』 



『ケルト人みたいな名前だな』


すかさず ダーギールが茶々を入れた


『だが なかなかいいんじゃないか?』


一人で満足そうに頷く



ゼッツは 彼女に名前を考えていたのだ。



『 ・・・・アィリーシェ 』 呟くと 何故か心が温かくなった 


昨日合ったばかりなのに ゼッダールターに名付けて貰った事が嬉しかった



『嬉しい・・・・・』 声に出すと 余計 嬉しさが溢れた


『素敵な名前です♪ ありがとうございます!!!』









そうして 黒い森からガバスの町が見えるようになるまで 

彼らは 丸2日荒地を旅しなければならなかった。


旅が始まって直ぐに アィリーは

(アィリーシェは可愛い名前だが少し長過ぎる と言って ダーギールにこのニックネームを献上された)

ダーギールがとてつもなく強い剣士だという事がわかった



森に入ったとき襲われた コヒョウという狼頭の豹も ダーギールは一撃で倒しただけでなく


荒地を旅するすべての者を悩ます 野良狼の群れや ジョラケー(岩場に住むワニ)


リザードマン(砂漠に住むトカゲのような妖獣) にも何度か襲われたが 


全部ダーギールが一人で倒してしまった



ゼッダールターは時々何か経文のようなものを唱えていたが 


それが何の為だったのかアィリーには分らなかった。









町に近づくにつれ道が整い 幅も広くなってきた 


大きな牛のようなオーロという動物が引く行商人の荷馬車とも 何台かすれ違った




海のように大きな湖と 辺境を貫く街道に面した町 ----- ガバスの門を潜った時 


もう閉門の時間が まじかに迫っており


タミルの村の木の門より 1回り程大きな 青銅で作られているガバスの門周辺は


オーロの引く荷馬車と人とが バタバタと行きかっていた


『どこかに宿屋はねぇかな?』


ダーギールが通行人を捕まえて尋ねる


『明日船が出るから この辺の宿はもう取れないだろうな 


少し離れるが オロソの宿ならしっかりしてるよ』



早口で親切に教えてくれた男は、 ゼッツに気が付くと 


一瞬呆けたように立ち止まり 持っていた荷物をドサッと足元に落としてしまった。


教えられた方角に進みだした ダーギーは


『まったく・・ 目立ってしょーがねぇな』 と 一人ごちた。





アィリーは笑いをこらえながら 荷物を拾って男に渡し 急いで2人に続いた。





ダーギーが愚痴る気持ちも分るが 等の本人も相当人目を惹いているとは気が付いていない


日に焼け均整の取れた大きな体にはアチコチ古い刀傷があり 


元来の人好きする顔と合わさって この上なく頼もしくみえる  




(ーーーークスクスーー)



『なにが可笑しいんだ?』


『何でもないです♪』


『アィリーは素直ないい子だと思っていたのに・・・ おとーさんは悲しいぞ』


『ダーギーさんを父に持った覚えはないです』   


『お前ッ 父の顔も忘れたのか???』  


(クスクスクスクス)


『ところで アィリーは何歳だ?』


『父さんこそ忘れたの?  


娘の年も分らないんじゃー  父とは呼べないですよ! クスクスクスクス 』


宿屋はもうそこだった アィリーは前を行く男2人を小走りで追い抜き


ダーギーを振り返って言った。


『今年15になりましたよ^^ おとーさま♪』



バシャーーーーーーーーーン


水桶の落ちる音と 派手に飛び散った水しぶきが足にかかり 後ろを振り向いたアィリーは


男達の顔を見てなかった。


ダーギーは一瞬変わった顔色を 次の瞬間には取り戻して 



宿屋の入り口に立ちすくむ少年に声をかけた


『結構なお出迎えだな坊主!  もう少し上から掛けてくれたら水も滴るいい男になったんだがなぁ』




少年は凍ったように3人を眺めている。


『こらっ 何してるんだいッ お客さんに謝りな!!』


中年の女性が宿の裏から エプロンで手を拭きながら出てくると


少年は頭をペコリと下げて 水桶を拾い 宿の中に消えた


『まぁまぁすみませんねぇ。  ・・・お客さん泊りかぃ?』


おばさんは やはり少し息を呑んでから言った



『生憎今日はもう一杯だが 離れなら空いてるよ 


明日船が出る日のこの時間じゃ ここいらの宿はどこも同じようなもんさ』



『あぁ頼むよ 』

ダーギールが腰に下げた皮の袋から 小さな金の塊を出して 手渡した。


鈍く輝くその欠片を見て おばさんが満面の笑みを浮かべて言った。


『じゃぁ 埃を落としてから入っとくれ 洗い場はそこだよ』


見ると 左手の奥に旅人が旅の埃を落とす 屋根つきの小さな洗い場が設けてある


『部屋を用意して来るから 先に何か食べておくれ』




木と石で出来た入り口に 布が垂れていて 中は色々な大きさの敷物敷いてあり 


クッションと衝立が簡単な仕切りを作っているのが見える





宿の1階は食堂になっているらしい 結構な人で賑わっていた


『そうそう クィヤーンを頼むといいよ  名物だからね。』


裏に回りかけていたおばさんが そう付け足して去っていった







洗い場で埃を落とし 3人が中に入ると 




30畳ほどの部屋にいた人々の間に 低いどよめきが起きた 


そして  サァーーーと波が引いていくかの様に その場に沈黙が訪れた。




明らかにこの3人は 人々が日常目にするものとは 全く違う空気を持っていた。




ダーギールは体も大きく 日に焼けた褐色肌と 均整のとれた体 良く見ると分る無数傷などが

彼が只者でない事を 物語ってはいるが 


その強さとは裏腹に 彼を包んでいる陽気なオーラが

彼に会う全ての人に “安心感” を感じさせた



その隣にいる

しなやかな肢体を持つ 初々しい美少女は

透き通るような白い肌と 幼い顔には似合わない大きな胸が

彼女に色気ともつかない不思議な魅力を与えている


(そしてここ数日の旅を経て 彼女の周りには つぼみが花開く時のような 

光り輝くオーラが出ていた)




この2人だけでも十分目立って 人々は思わずどよめいたのだが


その場に居た殆どの者が沈黙した理由は 一番最後に入ってきた若者を見たからだった






先ず 向こうが透けて見えそうな程 白いというよりは 透明感のある肌が人目を惹く


長い黒髪が 真っすぐ伸び 誰もが一瞬 女かと思うほど美しい顔に


無駄の全くない肢体が 薄いカシャーヤ(僧侶の衣装)をまとっているのも   


人間離れしてた印象を際立たせている


そして何より この男のもつ静かで強いオーラが 


この狭い宿屋に居る すべての人を飲み込んだからだった






『・・・・・・・まったく  一緒に居ると目立ってしょーがねぇーな 』


ダーギールが軽く首をふった 


その声でか 人々が冷静さを取り戻し 一瞬後には いつもの宿屋のざわめきが帰って来た




部屋の左隅に空いている絨毯と大きなクッションを見つけると ダーキールはそこにドカドカと歩き 


『なんだっけな・・・ おやじ クィヤーサンを持ってきてくれ!!! 』


と 座りながら 店の奥に向かって言った


彼の陽気な声が 何事も無かったかのような喧騒に吸い込まれる


厨房から顔を出していたおやじが うなずいて引っ込んだ。



『ダーギーさん  クィヤーンですよ 』



『わかりゃー何でもいいんだよ   あーそれと酒だ 酒!!!』


最後の半分は また店の奥に向かって言いながら 


もう大きなクッションに寄りかかって くつろいで居る



ゼッダールターも座禅を組んですわり 


店のおやじが持ってきたクィヤーン(鳥に似た肉を炭火で焼いた料理)はとても美味しくて 
(ダーギールは10人前も平らげた)


アィリーは久ぶりに食べる調理された温かい料理と 


初めての冒険の後の食事を 心から楽しんだ






丁度 ダーギーが2ガロ(約8リットル)の地酒を飲み 

11人前のクィヤーンをかじりながら ウトウトし始めた時   

入り口で会った おかみさんが皿を下げながら


『部屋の用意はできてるよ いつでも上がってゆっくりしておくれ』


と言った。
 

“ゆっくりできる” と 形容された部屋はしかし とても狭く


オーロ小屋の上に無理やり取ってつけたような部屋だった


明らかにおやじの手仕事なのであろう 木を組んである三方の壁の 所々に隙間があいている


だが今日のように 秋にしては暑い日の夜には


その隙間から入ってくる夜風や 石の床(それはオーロ小屋の天井にもなっている)が 


程よく涼しくて気持ちが良いだろうと思われた。 





部屋に着くなり ダーギールが真ん中でゴロン と横になった 


彼の両端には僅かに50センチばかりの幅しか残っていない


『ちょッ ダーギールさん 真ん中に寝るのはやめて下さい』


アィリーは慌てて巨体を動かそうとしたが 既に寝入ってしまった暢気な剣士はビクともしない


『私はここで良い あちらに入って休みなさい』


あちら?? 


良く見ると 壁だと思っていた部屋の北側は 天井から白い布が垂らされて仕切りを作っていたのだった 

布を上げてみると その向こうに幅1メートルほどの空間があり 布団のような敷物が敷いてあった


(ゼッツ様がこちらでお休み下さい・・・・・・・)


振り向いてそういいかけたが  部屋には もう美しい男の姿は見えなかった。



※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

【 2008/11/09 23:48 】

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まだまだファンタジー 
既に月は 高く頭上に輝いている

殆ど一方的に旅の仲間になってしまった男たちが 

今日はもう寝た方がいいと言って さっさと祠に入って横になってしまったので 

彼女も 隅で横になり体を丸めた。



目を閉じたとたん


あまりに色々な事があったので寝られるだろうか? と 心配する暇もなく 


吸い込まれるように深い眠りに落ちてしまった。










『さっき この子と誰かを間違ったみたいだが?』




彼女が寝入って暫くしてから

体格の良い男、 ダーギールが 

縦肘で頭を支え 横向きになったまま聞いた。 





男達は寝てなどなかったのである。





『・・・・・そうだな よく似ている』


いつの間にか小屋の上がり口で座禅を組んでいた ゼッダールターは


ダーギールに静かな微笑を返した 月明かりが湖畔や祠を照らしている






『恋人か?』


『いや 』





『あの子は 自分が人間じゃないと言っていたが?』


『そうかもしれぬが それは小さな事だ。』





『まぁ・・・・・・・・・ そりゃそうだが・・・・・』






『あんたがあの子と間違えた女も 人ではなかったのか?』



『・・・そうだ』



『・・・何だったんだ?』


『それは知らぬ』








『なぜ人では無いと分ったんだ?』



『・・・・・・・子を産まなければならないから種をくれと願ったので 交わった』






ダーギールは この世のものとは思えない程美しい男を マジマジと見つめた。


この男は 人で無い物と何の感情も無く関係したと平気で言っているのだ 


もう理解の限界を超えている。




だが それが小屋の隅で寝ている この娘ほど美しい獣だったのなら そんな事もあるのかもしれない。







『15年程前の話だ』






その言葉の意味が頭の中でゆっくりと着地した瞬間 ダーギールは思わず 体を起こした


『!!!じゃぁ  この子は もしかして あんたの・・・』



『・・・・・ かもしれぬな』



だがどうみても親子には見えない  

ゼッダールターは20代のように見えるが 想像以上に年をとっている事は間違いなさそうだ。


(こいつの方が人間じゃないって方が簡単に納得できそうだぜ)



密かにそう思いながら ダーギールは上向きに寝転がった


『それで この子を守ってやろうって事か・・・』



『いや・・・・・・・そうではない』 








暫くして 美しい唇が動いた



『この世には  滅びる種もある』




それは どこまでも静かな声だった。



ダーギールの深い溜め息は どこからか聞こえる獣の遠吠えにかき消された。

【 2008/11/08 17:00 】

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ファンタジーが止まらない・・・・
『知り合いかい? 隅に置けないねぇ』


突然声がして 

これは夢だろうか?と男を見つめながら考えていた彼女は ハッと我に返った




彼女は 男がもう一人 小屋に背中を預けて立っていた事に初めて気がついた


腰には剣をさしている。


湖の男は細身だが こちらは随分体格がいい 武器を佩びてなくても一目で戦士だと分る


湖の男は何事も無かったのように 又小屋に歩きながら答えた


『・・・いや 気のせいのようだ。』  


普通に歩いているのに なぜか音を感じさせない 


男の長い黒髪や腰に巻いた薄い布からポタポタと水が滴っているというのに・・。





湖畔の小屋には辺境の神が祭られてあった 


彼女は すっかり興味を失ってしまった小屋が 祠(ホコラ)だったとやっと気が付いた 


そして 少なからず動揺している自分にも気が付いて


急に恥かしくなり 頬が熱くなった。







『ほらほら  そんな薄着で水浴びなんかするから 目のやり場に困るだろ 』


体格の良い男が揶揄すると


『清める為だ 』   静かに答えて小屋に上がった



やはり音を立てずに神像の前に座り 座禅を組んで合掌すると


男は 静かに読経を始めた。











大柄な男が 壁に寄りかかったまま 昔からの友達にでも話しかける様に言った


『こんな時間に散歩かぃ? お嬢さん 』


『それとも可愛い顔をして 実は男を連れ込んで食っちまう人妖かな?』



最後は冗談っぽく言っているが  


もし彼女が本当に人妖(人間の姿をした妖怪)だったとしても


男はあまり慌てそうにはなかった。



『私 人間です。』


思わず そう答えしまってから 付け足した


『・・・たぶん・・・・』



『ハハッ  自覚が無いんじゃぁ 怪しいな 』

大柄の男は 人好きのする笑顔で答えた


『だが若い娘が 寝巻きでウロツクには ここは危なすぎるし村から離れすぎている』


『まさか さらわれて来たわけじゃないだろう?』


『・・・・・・自分から 出てきたんです・・』


『おぃおぃ 家出かい??? それにしても良くここまで来れたな 』


『 やっぱり・・・人間じゃないのかもしれない・・』


『俺の言葉をまともに受けんでも あんたは十分人間に見えるよ。 少し十分過ぎるがね 』


男がニヤッと笑ったので 自分が凄い格好で見知らぬ男の前に居る事に初めて気が付いた


白い膝丈の寝巻きは汚れているばかりでなく

枝をつたって進んだり 木に登ったり降りたりしていたせいで  

色んな所が引き裂かれボロボロになってしまっている


『キャッ』

思わず変な所から声が出て その場にしゃがんだ


『ここまで人間臭くて人妖だったら 俺はもう誰も信用できなくなるな』


笑いながら 自分の上着を脱いで 彼女に掛けようとした男の動きが 急に止まった。




男の目が 彼女の背中に走る50cmは有りそうな傷に注がれていた。



本来なら致命傷になるくらい大きな傷だ


慌てて上体をそらし 背中を押さえた 


傷はパックリ割れたまま固くなっている



男と視線が合うと 思わずうつむいて説明した



『・・・・・狼のような顔をした 豹にやられたんです』


『・・・コヒョウだな』


『だが いつの話だい? まさかそれから着替えてないって訳でもないだろう?』


男が彼女に ふわりと上着を被せながら聞いた 


『 ・・・・・・・・・・・・・昼ごろです』


『ほぅ・・』


その声から何の感情も読み取れないが 全身で男の強い視線を感じる




ふと視線が途切れ


『 ・・・・・ 悪いが それでも人妖にはみえねぇな 』 と溜め息交じりの声がした


何が悪いのだろう? 余りに淡々とした声に促されて 

もう何年も胸にあって彼女を苦しめてきた言葉を 初めて口に出した。


『私は ・・・寄生虫なのです    この体に巣くって育ってきました』


『・・・ほぅ 』






『私の宿り主は 今朝 死んでしまった。 ・・・この傷は私ではなく宿り主が受けた傷です』



『・・・・それで あんたは何なんだぃ?』  



男は真直ぐに彼女を見ながら聞いた。




『私の連れだ』



いきなり降って来た声に 今まで話ていた2人は思わず同時に祠の入り口を振り返った

いつの間にそこに居たのか そこには あの人間離れした美貌を持つ男が立っていた。




『・・・・・・』


彼女が何も言えないで居ると 

体格の良い男が代わりに答えてくれた


『お連れさんは 初耳のようだが?』



『私も今知ったところだ』



『そうか・・・・ 』      



心臓が飛び出すかと思うほど ドキドキしてきた 



『なら 俺の連れでもあるんだな 』


えっ???? 驚きすぎて 彼女は目を丸くした


体格の良い男は 陽気な声をあげて笑った


『おぃおぃ そんな大きな目でマジマジと見つめられたら 照れるじゃないか』


『俺は 暫くこの男にくっ付いて行く事にしたんだ だから お嬢さんとも仲間って事になるのさ 』




・・・驚いて声も出ない 動悸がどんどん早くなる。  

いきなり旅の仲間が2人も出来た?・・・




彼女は自分の心臓の音がきっと他の2人にも聞こえるのでは無いかと 本気で思った


そして自分の鼓動を聞きながら 

心のどこかで 本当に自分は喜んでいいのだろうか???という気がしていた。





【 2008/11/07 23:19 】

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